熱海から東海道線で三嶋へ。今回の三嶋訪問は伊豆の旅の一環として選んだ。中でも「三嶋大社」にはどうしても行きたかったところだった。
三嶋という地がどんなところなのか。ここにくれば伊豆の成り立ちや歴史そして神話を深く理解できると思ったのもその理由の一つだ。東京からも新幹線一つですぐに行けるのは、旅行好きのシニアにはありがたい場所だ。それを三嶋を去ってからより深く実感することとなる。
三島駅から白滝公園へ
三島駅からまずは白滝公園へ向かう。まっすぐに道なりに行くと左にその公園が見える。右は浅間神社と楽寿園がある。


白滝公園へ行く前に大きな溶岩がある。これは愛染院という大寺院があったところで、そこに溶岩塚なるものがあった。よってこれを「愛染院溶岩塚」というらしい。富士山からの溶岩によってできた溶岩塚だ。富士山から40キロここまで流れてきたのだという。この地が富士の溶岩によってできていることを見せつけさせる風景だ。白滝公園の中はそんな溶岩の岩でごつごつしていた。


でも何といっても水のきれいさ。そのせせらぎの音に旅の疲れが癒される思いだった。そしてその場から離れずに立ちすくみ、ベンチにすわって一時その川だけを眺めていた。すかさずスケッチブックを取り出してその風景を描いた。



その川は「桜川」。この川を下っていくと、三嶋大社がある。
桜川を通って
桜川の道沿いには多くの文学碑がある。私はそれを一つ一つ見てはこの三嶋の地を想い馳せた先人たちがいかに伊豆を愛し、三嶋を思い、富士を眺めたかを感じた。ここは昔から東海道の宿場町として栄えた。
これら文学碑はそんな人々の心を代弁しているかのようだ。桜川の流れ。”行く川の流れは絶えずして”の方丈記を思い出す。人はこの世に生まれ、生を営み、そしてあの世へと旅立つ。川はそんな人々の人生を象徴しているのかもしれない。桜川の潮流も人々に語り掛けている。
ただ流れるように生きる。清く美しくあれと。「旅」も同じかもしれない。人生の縮図が旅であり、そして「川」の流れに沿って歩く。「川」が人々を誘っているようでもある。



私はその石碑のなかでも宗祇の歌が気に入った。放浪三大詩人のひとりである、室町時代の連歌師:宗祇(そうぎ)の作品。漂泊の詩人といわれた宗祇。各地を巡って連歌の普及に努めた。彼は旅の途中の箱根湯本で亡くなった。
すむ水の 清きをうつす わが心

三嶋大社をめぐる
桜川を抜けるといよいよ「三嶋大社」がみえてくる。三嶋大社は三嶋明神を祀っている。大山祇神(おおやまつみのかみ)と積羽八重事代主神(つみはやえことことしろぬしのかみ)の二柱だ。大山祇神は山の神、事代主神は航海と託宣の神。伊豆の地形にふさわしく山と海の神を祀っていることがわかる。


源頼朝がこの社で源氏復興と戦勝祈願のために崇敬していたという。北条政子が勧請したと伝えられる厳島神社がある。


大社の前を通る旧東海道の道の真ん中にあったという石(たたり石)。行き交う人の流れを整理する役目があったという。たたりは本来糸のもつれを防ぐ具であった。そこからたたり石となったが、この石を取り除こうとすると災いが起こったことからも、「たたり石」として残されている。


樹齢1200年のキンモクセイ(金木犀)。国の天然記念物に指定されている。鎮守の森にふさわしい光景だ。


三島は2900年前の富士山の山体崩壊によってもたらされた泥流と土砂によってつくられたという。そのときに大きな巨石も運ばれてきたのだそうだ。上記のたたり石もその泥流によって運ばれてきたもの。
そんな風土から三嶋大社は人々の信仰の対象となり、大山祇神や事代主神が祀られる契機となったのだろう。ところどころに三嶋の歴史を知ることができる掲示板があるから読んでみる、三嶋がさらに興味深く思えてくる。


見志万由不(ミシマユフ)
神楽歌には”見志万由不(ミシマユフ) ”といういわゆる三嶋木綿がでてくる。そこには
三島木綿(みしまゆう) 肩にとりかけ われ韓神の 韓招(からお)ぎせむや 韓招(からお)ぎせむや
と書かれている。三島木綿は摂津(大阪府)に産した木綿のこと。この木綿を肩にかけて韓の技芸を舞い踊るという意味だろうか。
三島はこの伊豆だけでなく、大阪や愛媛にも三島神社はあり、大山祇神が祀られている。はたして「みしま」とは地名出なければ何を意味するのか。三つの島という解釈よりも、「御(み)」の「しま」といえるだろうか。
上記の神楽歌からすると、「しま」とはもしかしたら、「から」を示しているかもしれない。それがこの伊豆にわたってきて、伊豆の山と海と川の風土にふさわしい「みしま」大社として祀られるきっかけとなったとも考えられる。
三嶋の神々を思う
大山祇神は邇邇芸命の求婚者である木花之佐久夜姫の父である。もともとこの地にいた神だったのだろうか。大山祇神と木花之佐久夜姫。激しい山の噴火や泥流そして巨石といった力強さと同時に花のように咲きみだれる華やかさ。この両者を兼ね備えたのがこの三嶋大社の背景になっているように思えてならない。

そして事代主神。託宣と航海の神。伊豆の島々と太平洋の輝いた海。そこに独特の地形と風土を生んだ伊豆の地形。三島の地には山への崇敬、航海の安全、そして東海道を「旅」をるの多くの人の神への祈りがこめれらている。私もこらからの「伊豆の旅」と「人生の旅」の安全を祈った。
三嶋の旅はシニアには欠かせない旅行地だと実感した。
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