書評『直観を磨く 深く考える七つの技法』賢明なもう一人の自分がいる。

書評

私は最近「直観」について関心を持ち始めた。そんな中、田坂広志氏『直観を磨く 深く考える七つの技法』なる書籍を手にした。原子力工学専門の田坂氏による科学的な観点から、スピリチュアルな「直観」への解説が興味深かった。

その中での、キーワードの一つが「賢明なもう一人の自分」が下りてくるという感覚、そして「論理」と「直観」を融合させた「深く考える」という思考法である。

直観を磨く 深く考える七つの技法 (講談社現代新書) [ 田坂 広志 ]

1.瞬間瞑想

この書籍では、直観を発揮する方法として提唱してるのが、「瞬間瞑想」「瞬間禅」という一瞬にして静謐な精神状態に入る技法である。

確かに、直観を発揮するとなると、どこか精神的に落ち着きをもつために、瞑想をしたり、座禅を組んだりするという方法を考えやすい。

私もなるべく寝る前や起床時に簡単な瞑想を実践をしている。気持ちが落ち着くことは確かではあるが、雑念があったり、心配事などあると、宗教的な境地に達するという余裕はないというのが現実である。

もちろん、何らかの日常生活での不安を取り除いたり、心を落ち着かせたりするという効果はあるかもしれないが、日々の忙しい生活の中で、すぐさま瞬時に取り入れたり、心を落ち着かせたりするのは簡単ではないと思ってはいた。

そこでこの「瞬間的な禅」への状態に向かうということなのであるが、筆者はここで「直観力に優れた人格」を呼び出す技法を提唱している。

つまり、我々の中には無数の人格がいて、多彩な才能を発揮してくれるというのである。そしてその中でも他の人格とは比べ物にならないほど不思議な力を発揮する人格がある。

それを「賢明なもう一人の自分」といっている。

まるで、自分という存在が色々存在していて、特に優れた「ひらめき」を発揮する存在が自分の中に存在している。

それが、「賢明なもう一人の自分」だというのである。

たしかに、自分という存在は、自分だけという一つの個体だけに注目するればそれは肉体なのであるが、心はいつもあっちにいったり、こっちにいったりと、自由自在である。

時間を超越している。分刻み、秒刻みで、われわれの「こころ」は変わっている。そして、様々な自分が顔をだしては、私自身に問いかけてくれる。ことがないだろうか。

私は最近、50代の半ばになって、これからの後半人生のことで悩んでいる。岐路に悩んでいる。今までの仕事を辞めて、新しい分野にチャレンジするのかかどうか。

その選択の時期になって、いろいろな思いが湧いてくる。様々な人格が自分の中にいて、私に問いかけてくれる。それをもとに、メモをしたり、散策して思索したり、自分一人の時間をもって真剣に考えている。

これは50代の私だけが経験するものではないと思う。20代から50代の年齢の人はこの「岐路」に立つことが多いと思う。終身雇用がないといわれる現代の日本ではなおさら常に岐路に立たされるのではないだろうか。

そんなときにやはり「直観」というアイテムが出てくる。そして、本書で提唱している、「もう一人の自分」を呼び覚ますという作業が非常に有効化と思った。

直観を磨く 深く考える七つの技法 (講談社現代新書) [ 田坂 広志 ]

2.「直観」を科学へ落とし込む

「直観」というぶんや はどうしても、スピリチュアルであり、霊性、神秘的な分野に近い。直観がどうして人間に作用するのかという説明は、科学的には中々説明しがたいというところがある。

私はこの「直観」や「ひらめき」をより理論的に説明できないかを考えながら、古典や脳科学などを参考にしてきた。

ところで、この書籍では次のように「直観」と科学について興味深い説明がなされている。

近年、科学の最先端の量子物理学や量子脳理論が、なぜ「直観」というものが閃くのかについて、一つの興味深い「仮説」を提示し始めている。

と記している。それを「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」と呼ぶそうだ。

宇宙には普遍的に存在する「量子真空」の中に「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれる場があり、この場に、この宇宙のすべての出来事の情報が記録されているというものだ。

真空状態の中に宇宙のすべての情報が記録されている。このエネルギーや波動に人間が共鳴することで、新たな発想やアイデアが「降りてくる」という体験をするのだそうだ。

大いなる宇宙の力、存在、自然に人間の思考や感覚はリンクしているのかもしれない。

科学的な立証は今後の研究を待つにしても、情報が記録されている、まるで無限の図書館のようなものがこの宇宙に存在しているとしたらどうだろうか。

そしてそんな世界とリンクできる我々人間の能力があるとしたら、日常生活は非常に楽しくもあり、また試練があってもそれを乗り越えるための知恵を得られるチャンスだととらえることができるのではないだろうか。

本書では七つの技法を紹介しているが、基本的には「自分」に問いかけるとうい作業であると思う。

自分との対話の時間を持つことにしたい。

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